ある映画を観て13キロ痩せた話
10数年前、筆者が大学生だった時の話だ。
地元を離れ友人も彼女も作れず、そういった人間関係を求めない、
「俺はそこらの大学生みてえに馴れ合わないぜ」みたいな雰囲気を出せていると思っているが今思えば間違いなく社交性、社会協調性の無いだけの陰気なよくいるタイプのぼっちだった。
趣味といえば某掲示板の深夜アニメ実況スレに張り付き、只々リロードし続ける生産性皆無の日々。毎週最速で見ることのできるエンドレスエイトに興奮しているが貴重な10代最終盤にそんな事をしている場合ではないのに気付いていないくそバカアメーバ野郎だった。
そんなアメーバも一応引きこもりという訳ではないので外の世界にはでる。近所のスーパーへの買い物と当時既に絶滅寸前であったが辛うじて存在していた個人経営のレンタルビデオ屋だ。
当時は今のように動画配信サービスもなくあったら申し訳ない自由に作品を選んで見ようとするとこうして店まで足を運びレンタルするくらいしかなかった。
頭痛を起こしそうなほど冷房ガンガンの店内で旧作コーナーをぶらついていると(新作は高いのであまり借りたく無かった)一本の映画が目に留まる。
株式会社を立ち上げた元ジャニーズグループの番組の企画ではない。
本元の方だ。
滾るタイトルに惹かれとりあえず借りてみようかとカゴに入れた数本のDVDと共にレジに運び、機械より機械的ないいつものバイトのお兄さんにレジ?を通してもらい店を後にした。
アパートに帰り早速DVDプレーヤーの電源を入れる。
同時に借りた数本はシリーズ物だったのでまずは件のファイトクラブを見ることにした。
結論からいうと今まで観てきた映画の中でこれ程感銘を受けた物は無かった。
退廃的な雰囲気。大量生産大量消費、資本主義社会への警鐘。狂気。edシーンのwhere is my mindの導入。そして何より主人公タイラーダーデンを演じるブラッド・ピットの強烈なカリスマ性
陰鬱とした18歳を虜にする条件を全て満たしたような作品であった。
完全にどハマりした筆者は同時に借りていた舞-乙HiME全巻など無視し、レンタル期間の3日間何度も繰り返しファイトクラブを見続けた。
”こんな男になりたい。”
もう居ても立っても居られない。
まずは髪をカットしてもらいに始めて行く近所の美容院へ
70歳手前のおばさまにブラッドピットの画像を見せてカラーもしてもらう。
どう見ても長渕カットだがひとまずよし。
アメ村で赤のライダースも購入した。
恰好は似せたが当然ながらタイラーの様なカリスマ性は全く感じない。
”中学生、ロックはじめました。”
感が否めない
何が足りないのか考えた
そうだ。あの映画での肉体美、無駄のない削ぎ落された体。
そこに反資本主義、男の色気、精神が集約されているのではないか?
jr.ハイスクールロッカーはトレーニングをはじめた。
もちろん最初は0からなのでろくにできなかったがそれぞれ200回以上はこなせるようになった
もちろん闘う身体でなければならないのでシャドウボクシング、キックも一日1時間以上行った。
1年前期で既に必修を落としまくった大学生には時間しか無いのだ。
ネット記事で有酸素運動で脂肪を落とさなければキレのあるボディにはなれないということを学んだ。
スニーカーしか持っていなかったので近所のスポーツ用品店へ
できるだけ頑丈な走れる靴が欲しいと店主のおじさんに伝えると野球部員が使うトレーニングシューズをすすめてくれた。
その日からトレーニングに加えてランニングも始める。
朝昼夜関係ない。
猛暑も、雪の日も、雨が降ろうが1日最低20kmをノルマに走り続けた。
丈夫なトレーニングシューズも破れ、底が外れて3足目を買う。
3足目の写真
半年後、屈強な精神と肉体を身に付けた筆者がいた
やった事はどう考えてもブラッドピットでは無くフォレスト・ガンプだがひとまずやり切った。
体重は70kgから57kgまで落ち見事なカットラインのボクサー体型。自信もあふれている。
季節は夏から春をむかえた。
見事な体と大学中退の学歴を手に入れ故郷へと帰還した筆者がいた。
その後10年以上の月日が流れ最近子供も産まれた。
筋肉は落ちたが体重は70kg以上に戻った。
上司や嫁にどやされながら只々仕事と育児を繰り返す中であの日々を思い返し思う
where is my mind「俺の心はどこへ」
とりあえずまたダイエットをはじめよう。